和包丁が完成するまでには、様々な工程があります。
ここでは、燕三条が育んだ和包丁「剣謙心」の包丁が完成するまでの工程を写真付きで紹介します。
和包丁製造には、熟練の職人による手作業が不可欠です。機械では再現できない精密な工程を経て一丁の包丁が誕生します。三条鍛冶の伝統を受け継ぐこの工程は、素材の選定から鍛造、研ぎ、そして最終的な包装に至るすべてを手作業で行い、細部まで心を込めて手掛けています。これにより剣謙心の包丁は、ただの調理器具を超えた工芸品として、その価値を十分に発揮します。
▸工程1:過熱と叩き
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和包丁(片刃)の製造工程において、極軟鉄を赤熱させてハンマーで叩く作業は、包丁の地金を形成するための重要なステップです。この工程は以下のような手順で行われます:
- 極軟鉄を炉で加熱し、赤く熱するまで温度を上げる
- 加熱された極軟鉄を鍛造台に置き、ハンマーで均等に叩く
- 叩くことによって、地金の密度を高め、望む形状に近づける
▸工程2:軟鉄と鋼の接合
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当社の伝統的な技術を用いて、軟鉄と鋼を一体化させます。まず、硼砂と酸化鉄を特別な比率で混ぜ合わせ、この接合剤を地金の表面に均等にまぶし、その上に鋼を配置します。次に、約 1050℃ の温度帯で両者を加熱し、高温下で軟鉄と鋼がしっかりと結合するようにします。この温度は、両金属が最適な状態で接合されるために必要な、非常に精密な温度管理が求められる温度帯です。
▸工程3:圧着
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- 炉から温度の上がった材料を素早く取り出します。
- 取り出した材料を鍛造台に置き、ハンマーで圧着(鍛造)します。
- 圧着によって、材料の形状を整え、望む形に近づけます。この工程では、材料の密度や形状を調整し、最終的な製品の品質を向上させる役割を果たします。
▸工程4:鍛造・コミ出し
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この工程では、まず材料の厚みを均一にし、バランス良く鍛えることから始めます。次に、包丁の柄部分がしっかりと収まるように、中子(コミ)を慎重に広げていきます。この「コミ出し」と呼ばれる工程では、中子(読み:なかご、包丁の柄部分に収まる金属の芯のこと)を打ちながら徐々に形を整え、包丁の基本的な形状を鋳造します。最終的には、手に馴染む滑らかな柄の形に仕上げます。
▸工程5:広げ
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その後の工程では、鋼を締めていくために温度を下げながら厚みを調整します。具体的には、鋼の締まる温度帯で、包丁の形状を整えるために鋼を打ち締めていきます。この工程は「広げ」とも呼ばれ、包丁の刃の部分を最終的な形に仕上げる重要なステップです。この工程において、鋼の温度管理と厚みの調整が正確に行われることで、最終的な包丁の形状が決まります。技術と経験が必要な作業です。
▸工程6:切り落とし
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「広げ」の工程によって鋼を締め、材料の厚みを調整した後、包丁の形状を整えるために、広がりすぎた軟鉄を切り落とします。この作業により、包丁のバランスが向上し、使いやすさが確保されます。最終的な形状へと近づけるための重要な工程です。
▸工程7:ならし打ち
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鍛造工程が一度終了した後、再度鋼を温度を下げてから締める工程を行います。これを「ならし打ち」と呼びます。この工程により、鋼の内部構造が均一化され、包丁の品質と耐久性が向上します。ならし打ちが完了すると、鍛造工程は終了となります。
▸工程8:成形
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鍛造によって形成された包丁の原型は、まだ粗い状態です。ここで「型すり」の工程が始まります。この工程では、材料を慎重に削り取り、包丁としての正確なサイズと形状に調整します。削り取ることで、不要な部分を取り除き、包丁のバランスを最適化します。最終的には、使い手の手に馴染む、美しく機能的な包丁へと仕上げていくのです。
▸工程9:熱処理/焼入れ、焼戻し
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包丁全体に砥の粉を塗布し、十分に乾燥させた後、加熱処理を行います。この段階では、包丁の表面に均一な砥の粉の層が形成されます。
次に「焼入れ」と呼ばれる工程に移ります。包丁を一定の温度まで加熱した後、急速に水で冷却します。この急激な温度変化を経て包丁の材質が硬化し、切れ味が向上します。
しかし、焼入れにより硬化した材質は、鋼の持つ粘り強さを失ってしまいます。そのため、次に「焼戻し」という工程が必要となります。これは、包丁を約180℃の低温炉や油でゆっくりと加熱し、材質を適度に柔軟に戻すことで行われます。
焼戻しは、刃物が粘り強く、長持ちする金属組織を形成するために必要な工程です。これにより刃が適度な硬さと柔軟性を兼ね備え、長時間の使用にも耐える製品造りに繋がります。
▸工程10:仕上げ
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まず、包丁全体のひずみを取り除くために、荒い砥石を使用してバランス良く研ぎます(狂い取り)。この工程では、焼入れによって品物に熱が加わるのを防ぐため、多量の水を使用しながら慎重に作業します(荒研ぎ)。続いて、荒砥、中砥ぎ、仕上げ砥ぎの順序で研ぎ進め、包丁の刃を研ぎ上げます。その後、柄を取り付けて包丁としての形状を完成させます。最終的に、銘切り(めいきり)を施し、箱に入れて製品として仕上げます。

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